不妊治療 体外受精①採卵編
クリニック到着。精子提出。静脈で本人確認もされる。徹底している。
私の受付番号が、行ったことのないフロアに案内された。
カーテンが引かれたベッドがずらりと並んであり、奥から手術着を着た患者がヨタヨタと出てきている。奥が手術室のようだ。
下半身の服をすべて脱ぎ手術着のガウンに着替え、手術キャップを被るよう指示される。
すっごいピンク。ビビるほどベビーピンク。全然趣味じゃない。
トイレに行くよう指示され、また10分ほど割り当てられたベッドで待つ。
どれくらい痛いのかしら、といらんことを考え始めてしまった。
注射器で吸い出すっていうのだから、採血と変わらない感じ?でも病院によっては局部麻酔や静脈麻酔で行うところもあるし。
Kクリニックは髪の毛よりも細い針だから痛みが少ないよ〜っていうのが売りだそうだが、元美容師から言わせたら
髪の太さは!!!!!
個人差が!!!!
あるんや!!!!!!
めっちゃ細い髪よりも細いって認識でおけ!?
と半ばキレそうになる。
カーテンの外ですすり泣きが聞こえてきた。手術室から出てきてすぐのようだ。看護師が「痛かったね。びっくりしたね。大丈夫ですよ、ゆっくり休みましょう」と患者に声をかけている。
こんな!!!!
直前で!!!!
やめてくれよ!!!!
めっちゃ怖いやんけ!!!!!
名前を呼ばれた。手術室の横のパイプ椅子で待機。心情的には最悪のタイミングだ。心臓がドラムロール状態。口から出そうってこのことか。
手術室に呼ばれた。いよいよだ。
手指消毒。静脈認証。モニターに表示された名前と生年月日が合っているか確認。体重を測る。
手術室は薄暗い。手術台は内診台の機能もついており、足がかっぴろげられるようになっている。
(こんなイメージ。実際はもっと暗くて、患者の股周りだけ明るい。お股・オン・ステージ状態)
下半身丸出しで台に横たわる。いつものご開帳スタイルだ。カーテンがないぶん、いつもより恥ずかしい。
ここで看護師
「本人確認のため名前と生年月日をおっしゃってください」
えっ!!
この状態で!?
丸出しやで!?どういう罰ゲーム!?
いや、いいけどさ!!!
脚ぱっかんの状態で、言われた通りに個人情報を伝えた。
看護師がやまびこする。
「〇〇さん、〇〇年〇月〇日生まれです」
めちゃめちゃシュールだ。
「これはおもろい、あとで夫に話そう」なんてのん気な考えがよぎったが、おかまいなしに採卵がスタートする。
卵巣内を映す機械がまず挿入される。枕元のモニターを見るように指示される。
これが卵胞です、これの中身を今から吸い出します、と。
悠長にハイ、ハイ、と返事をしていたところ、医師から
「チクッとします」のかけ声。
針が刺さっていく。
ん?耐えられるくらいかな?
んー。違うな、これは痛い。
あああああああ痛い、痛いわ。
痛いのと不快感がすごい。
耳の穴をアカンところまで掃除されている感じ。ギイイイイと目を瞑りたくなる。脚を閉じたい。痛い。
イラスト検索したけど、見てるだけで痛い。
子宮め、笑ってる場合ではないぞ。
痛みに耐えていると、看護師が肩に手を添えてくれている。人肌っていいな…いや痛いけど…
針の先が卵胞に刺さりました、吸い取ってますよ。とのこと。モニターを見る。
卵胞だと言われていた丸がどんどん小さくなっていく。
医師「最後まで吸い取るため針を少し動かします」
いだだだだだ!!!!!
やめえ!今すぐやめえ!!!
なあにが「髪の毛より細い針」じゃあ!
グリグリすなあ!!!!
イマジナリー千鳥ノブが私の脳内で大暴れしている。
ひたすら耐え、痛みのピークが去った。注射針が抜かれたようだ。
止血のためにガーゼが挿入される。
医師「ガーゼ2枚入ります」
看護師1「ガーゼ2枚〜」
看護師2「ガーゼ2枚〜」
手術室はラーメン屋ですか?高学歴たちがやまびこしている。(のちのち理由がわかる)
ともかく終わったらしい。看護師の誘導でヨタヨタしながらベッドに戻る。お股からはガーゼの先がピロピロとたなびいている。
「ベッドでしばらく横になって安静にしてください」
遠慮なく横たわる。
終わったのか。下腹部が生理痛のような鈍痛だ。ちょっと気持ち悪い感じがする。
ほっとしたのか、緊張の糸が解けたのかちょっとだけ涙が出てきた。
5分くらいで看護師が入ってくる。採卵結果の速報と、これからの流れの説明だ。
・卵子は1個採れた
・あと20分くらい休め
・その後トイレ行ってガーゼを抜け、2枚入ってるか確認せよ
・トイレットペーパーに血が付かないか確認せよ
・トイレから出たら看護師にガーゼ枚数を報告せよ
手術室でのガーゼやまびこは、体内に異物が残らないようにするためか。なるほど。
20分後、まだ鈍痛は薄ぼんやり感じるものの動けないわけではない。看護師に誘導されトイレにいく。
ところどころ血に染まったガーゼが自分の股からズルズルと出てくる。軽いホラーだ。
血は止まっているようなので、トイレの外で待機している看護師に枚数を伝える。
体調が悪くなければ身支度を整えて待ち合いフロアで待機、培養士と医師からの説明があるとのこと。
エレベーターに向かう廊下から、ガラス張りになった培養室が見える。
どうかよろしくお願いします、と小さく手を合わせた。
培養士と医師からの説明。
「卵子の状態は特に所見なし、悪くないです。精子の成績は平均以上でとても良いです」
億男め…!頼りになるぜ、夫!!
「精子の成績が良いので、このまま卵子に精子をふりかける形での体外受精を試みます。正常に受精し、細胞が分割したら翌日メールにてお伝えします。順調に進めば明後日、新鮮胚移植(凍結せず新鮮な状態で体内にもどすこと)を行います。」
とんとん拍子だ。今日採ったやつは明後日に戻すのか。考えたひとすごいな。
お会計、40,000円。
明後日ビビるほどの金額を請求されることを、私はまだ知らない。
移植、判定日編へ続く