不妊治療 体外受精クリニック初診編
2021年2月。
私たち夫婦は体外受精へのステップアップを決めた。
ここで大きな問題になるのが病院選びだ。
場所によって治療方針や価格が大きく違う。
しかも治療実績を公開しているところとしていないところがある。
ハードル高すぎやろ…と絶望しかけていたところ、夫からある提案が。
夫の部下の女性で、長年不妊治療してたが実らず、新宿の某有名クリニック(Kクリニックとしよう)に転院したら一発で授かったという方がいるらしい。そのKクリニックはどう?とのこと。
Kクリニックについて口コミを見てみた。
・体外受精専門のクリニック。
・高齢だったけど授かることができた。
・自然周期で投薬が最低限で良かった/向いてなかった。
・無麻酔採卵が良かった/辛かった。
・培養士の腕がピカイチ。
・待ち時間が長い。
・基本的な用語は覚えてる前提で話がすすむ。質問できる雰囲気ではないため、勉強必須。
・仕事でその日は通院できないと言ったら「ではこの周期は諦めるしかありません」と冷たく言われた。
・年末年始やお盆、日曜も開いているので治療周期を見送らなくてよいのが助かる。
・さすが体外受精フェーズ最後の砦と言われているだけある。
だと。
ちょいちょいわからないワードが多い。また勉強しないと…
それより、最後の砦に最初から挑もうとしてるの?私。ネタやん。
なによりこんなに身近に成功例があるのだからと、Kクリニックに通うことを決めた。
しかし、考えないといけないことが増えた。
体の周期に合わせて急遽仕事を休まないといけない可能性が出てきた。
生理周期は確実なものではないし、ましてや卵胞の成熟具合などはシフト希望の提出時にはわかるわけもない。
口コミのとおり、「仕事休めません」などと言ったら「さもなくば死ね」と言われてしまう(ちがう)
恥も外聞もクソ食らえである。ここで腹をくくらねば一生後悔する。店長にカミングアウトするしかない。そして都合をつけてもらうお願いをする。店長は男性だったが、私の治療の話を真剣に聞いて、要望を簡潔に吸い上げてくれた。シフトの件は随時相談するように、応援するよと。ありがたすぎる。
加えて店舗で一緒に働くメンバーにも伝えねば。
子持ちもいなけりゃ既婚者も私だけ、ほぼ全員が私より若い女性たち。きっとすぐ理解するのは難しいだろう。が、優しい子たちなので「通院のために毎月数日急遽休む」だけだと「体調が悪いのか、何か病気なのか」と心配させてしまう。それは私の本意ではないし、僭越ながら彼女たちの今後のライフプランの中に私の先例が何かの役に立てばと思い、職場のメンバーには包み隠さずすべて話すことにした。
あとは今まで以上に謙虚さを持ちみんなに感謝を伝える。プライベートまで応援してもらえるようなパフォーマンスを維持する。これに尽きる。
私があまりにあけすけに話すので、興味津々で聞いてくる子が何人かいた。私も私で話したがりなので多少おもしろ可笑しく話すようにした。(この語りがのちのちブログの構成に活きることになろうとは…)
よし。根回し完了。
初診に際し予約やらをする。
初診用問診表はWeb入力らしい。開いてみる。
ア…アホほど長い…
しかも細かい数字が必要。今までの通院記録を引っ張りだしながら入力していく。
・子どもを望みはじめたのはいつから
・タイミング法は何回実施したか
・AMHの数値は
・夫の精子の成績は
この項目がいちばん堪えた。現実が突き刺さる。今までにもいろいろ突き刺さりすぎてもはや風通し抜群の私のこころ。
予約当日。ひとりで新宿に向かう。
本人確認書類を提示し、静脈の登録をする。
診察券が発行された。患者番号の他に受付番号が毎回振られ、院内の画面に表示された階に移動を促される。登録しておけば、移動のタイミングでメールも送られてくる。メールが来るまでの間外出も可能だ。
待ち時間の間に読めと、院長が書いた書籍を渡される。
採血コーナーに呼ばれる。苦手な注射だ。顔を背けた。終わりましたよ、と声をかけられてテーブルを見たら6本も血液を取られていた。ちょっと目が回る。ちょっと目が回ります、と看護師に伝えると安静室に案内された。ベッドに横になる。もうすでにつらい。
10分ほど休み、採尿。血圧測定。
もろもろの検査結果が出るまで別フロアの院内PCでムービーを見る。お勉強だ。
内診室に呼ばれる。消防士のごとく服を脱ぎ検査。
ここで驚きの事実発覚。
「左の卵巣と卵管の間に、水泡がいくつかありますね。せっかくのタイミング法はこれに邪魔されてたのかもしれません。」
えええ。前のクリニックでは何も言われなかったんだけど。一日二日でできたり消えたりするものではないらしく、おそらくずっとあっただろうとのこと。
まじかよ。夫ごめん。重ね重ねごめん。謎の水泡こさえてしまってたみたい。
もっと早く体外に進んでも良かったってこと?とモニョモニョした。
血液検査やらの結果が出たらしく、診察室に呼ばれる。
感染症にはかかっていない、風しんの抗体もある(追いワクチンしたからね)、AMHの数値がやはり低いなどいろいろ説明を受ける。
医師「いつから治療を始めたい?」
私「なるはやで」
医師「では10日後来院してください。卵胞の大きさをはかり、十分であればその次の日採卵をします。採卵日には旦那さんの精子をもってきてください。今回は新鮮胚移植をします、採卵の2日後には体内に胚を戻します。」
パードゥン?
おおう、急展開なんだが。
今月さっそくやるのか、そりゃそうか。
さっき勉強したムービーのおかげで医師の言ったことは9割理解できたが、心の準備が追いつかないまま放心状態で会計待ちをした。
4時間の滞在、お会計¥23,987
金銭感覚はすこしマヒしてきた。
こんなもんだろ、と。
帰りの電車でシフトの確認をした。
医師に指定された日は全部出勤の日程だった。
地を這うような気持ちで店長にシフト相談のメールを打った。
「こんな周りに迷惑かけてまでやることか?」
もうひとりの自分がチクチクと言ってくるがなるべく聞かないようにする。子どもは私の行動でしか授かれない、いくら仕事をやったって会社が子どもをくれるわけではない。
同僚には謝ろう、感謝をしよう、いままで以上に誠実に接するようにしよう。これしか思いつかない。応援される人間にならねば。
「夫は休まなくていいから気楽だよな」
いやいや仕方ないことだ。もうひとりの自分うるさい。
夫は妊娠できないのだ。妻に仕事を休ませて気まずい思いをさせることは、私が夫なら心苦しい。自分は種を出す以外なにもできないのだから。しゃーない。労うしかないし、きっと夫なら労ってくれるはず。
(シフトの調整ありがとうね、同僚のみなさんにも感謝だね、と毎回言ってくれました。ただの神)
なんとかシフトの都合がついたので、医師指定の10日後に備えることになった。